真空調理法とコンフィの比較

前回の実験で真空調理法の素晴らしさを実感したのですが、疑問に思ったのは「コンフィ」という調理法との違いです。
コンフィとは、鴨などの肉を油に沈めて低温でゆっくり長時間(6時間以上)加熱するフランス料理の調理法です。
・油に沈めるため、水溶性の化合物が外に出ず、うまみや肉汁を逃さない
・低温調理のため、肉を加熱しすぎない
という特徴は、まさに真空調理と同じです。

油か真空パックか、の違いはあるのでしょうか

料理の本には、「コンフィに近い味を真空調理法でもできるという報告がある」と極めて曖昧なことしか書いていなかったので、比較してみることにしました。

・材料
鶏の骨付きモモ肉

・加熱条件
58℃ 12時間

この加熱条件は、真空調理法だけでも試してみたかった条件です。
骨付きモモ肉のようにコラーゲンに富む肉を、コラーゲンが溶け出すのに適した条件で調理すると、筋肉を取り囲む結合組織がゆるくなるので、ほぐれるような柔らかさが生まれるそうです。
ただしコラーゲンを短時間で溶かそうとすると、70℃以上の加熱が必要で、それだと筋肉に含まれるアクチンが変性して硬くなってしまいます。
しかし58℃で長時間、という条件で調理すれば、コラーゲンが溶け出すには充分な時間で、しかもアクチンの変性をさせない温度なのです。

まずは下処理です。
コンフィのレシピに従い、切り分けた鶏肉の表面にフォークで穴を開け、塩を振り、1晩寝かせます。

水で塩気を落としてから、塩とローズマリーをまぶして、
・そのまま真空パック
・オリーブオイルに入れて真空パック
の2つを58℃に設定したヨーグルトメーカーに入れました。

ヨーグルトメーカーで真空調理中の鶏肉たち

そのまま12時間放置。

さて、取り出してみます。

左:真空パックのみ(真空調理)、 右:オリーブオイル漬け(コンフィ)

両者とも、肉汁が出ています。コンフィのほうも、油のなかに肉汁が浮いています。
どちらもとてもおいしそうです。

まずは真空パックのみの肉を試食。
なんと・・肉が箸でほろほろっとほぐれる!!
これぞコラーゲンの溶解により結合組織が柔らかくなっている証拠。

真空パックのみの肉(真空調理)

口に入れると、ほぐれる柔らかさ。そして旨みが詰まった肉汁でジューシーです。
パサつきがまったくありません。
こんなにおいしい鶏肉は、食べたことがない。

次はオリーブオイル漬けのコンフィを試食。
こちらも、肉が箸でほぐれる点は同じ

オリーブオイル漬けの肉(コンフィ)

口に入れると、こちらも柔らかい。
あれ、でも真空調理の肉に比べると、ジューシーさと旨みが少しだけ足りない気がします。
少しパサつきがある。
もちろん普通に焼いた肉とは格段に違っておいしいのですが。

このジューシーさと旨みの違いが生まれたのはなぜでしょうか。
油漬けと真空パックの違いを考えてみると、加熱中に溶け出す成分に違いがありそうです。
油に漬かっていると、脂溶性の物質が油に溶け出ます。なので鶏肉に含まれる脂肪の一部が、油漬けのほうが真空パックより多く流出したと思われます。
肉の脂肪には、脂溶性の芳香族化合物が多く含まれ、肉の香りや風味を決めると言われます。肉のうち筋肉組織の味は牛肉、豚肉、鶏肉など種類を問わず同じらしく、脂肪組織だけが味の違いを決めているそうです。
だとすると、今回のジューシーさと味の違いは、香りや風味の成分を含む脂肪が肉の中からオリーブオイル内に流出したかどうかによる違いなのではないでしょうか。

気づいた頃には真空パック袋の肉汁も油も捨ててしまっていたので上の仮説はもう検証できないのですが、
調理前に肉とオリーブオイルの重量を測っておき、どれくらいの肉汁や油が流出したか調べるべきだったと後悔しました。

しかしながら、真空調理法でもコンフィでも、
58℃で12時間調理した鶏肉は、箸が止まらないくらい本当においしかったです。
コラーゲン溶解の威力は素晴しいと思いました。

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